2023年10月25日(旧暦九月十一日) 遷御の儀 元禄二年九月十三日(1689年10月25日)

昨夜から山田西河原(現在の伊勢市宮後1丁目辺り)の嶋崎味右衛門又玄(ゆうげん)宅に泊っていた芭蕉一行は、朝から内宮参宮して14時頃に戻り、夕方いよいよ外宮の遷御の儀参拝するため二人の御師の案内されます。なお、内宮の遷御の儀は十日でした。

「暮前より神前詰。子ノ刻前御船渡ル、神宝ハ夕方ヨリ運ブ。月ノ気色カンニ(完爾)タリ。」と曽良は書き残しています。

御神体は深夜に新宮に遷られます。時あたかも後の月*(旧九月の十三夜)。浄闇の中白麻の道敷布の上をを厳かに進む渡御御列を煌々と浮かび上がらせたかもしれません。御神体は絹垣と呼ばれる大在の神官たちが捧げ持つ白絹の長大な布の目隠しによって守られています。

「内宮はことおさまりて、外宮のせんぐうおがみ侍りて / たふとさにみなおしあひぬ御遷宮」と芭蕉は詠んでいます。

初秋の月七月十五日は楽しみにしていた金沢にやっとの思いで着いたものの、心頼りにしていた一笑の死を知らされて月どころではなく、敦賀の名月は雨に降られ、此の地伊勢での後の月は一入芭蕉の心に沁みたのではないでしょうか。又玄宅への帰り道、いっそう気分が高ぶったかもしれません。宿に帰ってもあれこれ話が盛り上ったものと思います。「さのみ笑ひて散々に成り申し候。」と十五日付で木因に十一日の「神楽拝」の様子を書き送っていますが、この日も同様だったでしょう…。「月さびよ明智が妻の話せん  又玄子妻のまゐらす」**

2023年は10月27日が旧九月十三日にあたります。

*後の月は、中秋の芋名月に対して栗名月、豆名月とも呼ばれ、その時期旬のお供え物に因むと言われます。では、なぜ十三夜月かというと、芋・栗・豆の断面形状からきているのではないかと思います。酒田近江屋玉志亭での芭蕉句に「初真桑四にや断ン輪に切ン」があります。名月は芋・栗・豆を輪に切らんです。十分太った芋・栗・豆に限りますけど…。2023年10月27日、日本列島は高気圧に覆われています、栗名月見れそうです。 **ひと月ほど前の丸岡称念寺門前の明智の昔話も披露して、夜更けに詠んだものと思います。9月22日の項も参照ください。

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