2023年8月3日(旧暦六月十七日) アイ風吹テ 元禄二年六月十八日(1689年8月3日)

 

十八日は朝から快晴でした。

「早朝、橋迄行、鳥海山ノ晴嵐ヲ見ル。」昨日の「其朝天能霽て」はこの日の印象からきているのかもしれません。

朝食後、芭蕉は象潟橋近くの船着き場から船で象潟を発ちます。馬も通れない難所続きの陸路をまた戻ることを厭う芭蕉に対する配慮で、塩越の名主や「みのの商人 低耳」等の手配により、もしかしたら上りの北前船に乗船したのかもしれません。

「アイ風*吹テ山海快。暮二及テ、酒田ニ着。」芭蕉と曽良は船旅を快適に過ごしたようです。再び酒田に入り二十五日の朝まで滞在することになります。この間に「温海山や吹浦かけて夕涼」を発句にした不玉との三吟歌仙などを残します。

*アイ、アイノカゼ、アユノカゼ:船乗りの言葉で、北前船の上方に上る際に順風として利用された。この辺りでは北寄りの東風。ただ、芭蕉と曽良はこの言葉を万葉集によって知っていたと思われます。「東風(あゆのかぜ)いたく吹くらし那古の海人の釣する小舟漕ぎ隠る見ゆ」(大伴家持) 「おくのほそ道」でも市振の段のあと「那古と云浦に出る。」と歌枕に触れています。

コメント

このブログの人気の投稿

2023年5月16日(旧暦三月二十七日) 芭蕉、旅立つ。元禄二年三月二十七日(1689年5月16日)

2023年10月27日(旧暦九月十三日) 谷木因 元禄二年九月十五日(1689年10月27日)

2023年10月18日(旧暦九月四日) むすびの地 元禄二年九月六日(1689年10月18日)