2023年7月16日(旧暦五月二十九日) このたびの風流、茲に至れり 元禄二年五月三十日(1689年7月16日)
「晦日 朝曇、辰刻晴。歌仙終。翁其辺へ被遊、帰、物ども被書。」と曾良旅日記にあります。この日は朝早くは曇っていたもののすぐに晴れたようで、昨日からの歌仙が曽良の「山田の種をいはふむらさめ」を揚句に満尾します。芭蕉は歌仙の出来に満足してか、興奮を鎮めるためか「其辺へ」散歩に出ます。そして一栄宅に戻り、歌仙の清書をし、「物ども」書き記しました。「最上川のほとり一栄子宅におゐて興行/芭蕉庵桃青書/元禄二年仲夏末」と署名する大石田伝来の「さみだれを」歌仙真蹟懐紙が残っています。
「爰に古き俳諧の種こぼれて、忘れぬ花のむかしをしたひ、芦角一声の心をやはらげ、此道にさぐりあしゝて、新古ふた道にふみまよふといえども、みちしるべする人しなければと、わりなき一巻残しぬ。このたびの風流、茲に至れり。」(「おくのほそ道」)
「このたびの風流」は、大石田での俳諧興行を指すと同時に、白河の関を越え須賀川での「風流の初や」からここまでの俳諧とこの「おくのほそ道」「旅」のすべての風流を指していると思います。
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