2023年7月15日(旧暦五月二十八日) あつめて涼し 元禄二年五月二十九日(1689年7月15日)

次の日、芭蕉の「さみだれをあつめて涼し最上川」を発句に四吟歌仙を巻き始めました。船問屋である一栄宅は最上川のほとりにありましたので、亭主に対する型通りといえる挨拶句です。

どういう訳か、歌仙は一巡終えたところで中断、芭蕉は連衆の一栄と川水の二人を誘い、川向こうの黒滝山向川寺にお参りに出かけます。曽良は「予所労故」同行しません。突然の中断には少し違和感を覚えますが、曹洞宗中本山であった向川寺は立石寺と並び称されたともいわれているようですから、では一見と単に芭蕉が言い出しただけかもしれません。一巡して川水が「里をむかひに桑の細道」と詠んだところでもありましたので。また、尾花沢で「けふも座禅に登る石上」と詠んだことでもありますし。

向川寺は一栄宅より半里ほどの距離にあり、三人は道々詠み継ぎ、14時頃には戻り、曽良も復帰して歌仙を巻き続けたものと思われます。

「夕飯、川水ニ持賞。夜ニ入、帰。」川水は大石田の大庄屋でありましたから、さぞ豪華なもてなしだったのでしょう。

なお、この歌仙の発句はのちに中七を「あつめて早し」と改められ、おくのほそ道の最上川を下った折の句として収録されます。実際は六月三日のことで五月ではなくなっていましたが…

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