2023年6月8日(旧暦四月二十日) 越行まゝに 元禄二年四月二十一日(1689年6月8日)

 

「とかくして越行まゝに、あぶくま川を渡る。左に会津根高く、右に岩城・相馬・三春の庄、常陸・下野の地をさかひて山つらなる。」と本文にあります。構成上は白河の関を越えて、白河、矢吹宿あたりの道中にあたりますが、この描写は白河から郡山、福島くらいの情景が含まれています。

実際は、まず、奥州街道で阿武隈川を渡るのは白河城下を出たところ(二十一日通過)で、会津根すなわち磐梯山は須賀川宿(二十二~二十九日)くらいから左に見え出し、その姿が高くなるのは郡山から二本松あたり(二十九日~五月一日)です。同様に「右に岩城」は白河・矢吹(二十一、二十二日)、「相馬」は福島(五月一日、二日)、「三春」は郡山辺り(二十九日~五月一日)となります。なお、常陸・下野の国と岩代・岩城の国の境は、関東と奥州の境となり白河の関が置かれていたところです。たしかに八溝山*などがありますが、「山つらなる」との表現は上記の道中では、奥州街道と太平洋側を隔てて連なる阿武隈高地の情景がふさわしく思われます。*曽良は旅日記俳諧書留に「八みぞ山 ひたち・下野・みちのくのさかい」とメモしています。

「おくのほそ道」創作にあたり、芭蕉によりおおいに脚色されているところです。

写真左:郡山を過ぎて「檜皮宿」近くからの磐梯山、右:矢吹宿近くの鏡石から阿武隈高地

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